また関東に雪が降った。雪が積もるとブログが書きたくなる平岡です。(笑)
雪のために車が使えず、夜の道を歩いて家に帰った。
その時、ふと、煙草の香りが鼻をかすった。
瞬間、遠い昔の記憶が頭の中に蘇った。
もう、30年近く前のことだ。
毎年子供会の集まりで、新潟までスキー旅行に行っていた。
僕らはロッジに泊まっていた。
夜ご飯を食べた後、外のお土産屋さんに歩いて行くのが習慣になっていた。
売店は泊まっていたロッジのすぐ隣にあったのだけれど、一旦外に出て歩いて行く必要があった。
雪国の凍てつく夜の風、オレンジ色の街灯に照らされ、眩しいくらいに輝く雪の道、雪の匂い。
雪国生まれでない僕にとっては、年に一度のスキー旅行が沢山の雪に触れられる唯一の機会で、心が踊り、嬉しかった。
そんな、何十年も昔の情景を、僕はありありと思い出した。
思い出させたのは、雪の匂いと、それに染み入る煙草の匂いだった。
僕は煙草が嫌いだ。
昔から煙草は嫌いだったけれど、幼少の頃は煙草がありふれていたのだろう。
あの頃の楽しかった。雪の街。ワクワクしたロッジでの夜。
その、どこかしこにも煙草の匂いがあったのだろう。
意識した事すらなかった。
それが、雪道にふと漂ってきた煙草の香りによって、
忘れていた記憶が呼び起こされたのである。
それまで、煙草の香りを嗅いだだけでは、決して思い出した事はなかった記憶だった。
夜の匂い。雪の匂い。煙草の匂い。
それらが、混じり合って初めて記憶のトリガーとなったのだろう。
今は昔ほど、煙草の匂いを嗅ぐことも少なくなった。
煙草嫌いの僕にとっては、匂いが無いに越した事はない。
でも、昔はそれが普通だったから、それ程酷い嫌悪感は無かった。
それはそれで非常に不思議で、今思うと、非常に驚くべき事だ。
僕自身、今の今まで、煙草の香りで記憶が目覚めるまでは、
その記憶の中に煙草の匂いがあった事なんて
みじんも憶えていなかった。
それだけ、煙草が日常から離れていったという事なのだろう。
煙草の匂いは嫌いだけど、
こんな風に時代が変わって、
いつの間にか、
思い出さなくなってしまう記憶がいくつも積み重なっていくと思うと、
少し淋しい気もするのだ。